ロゲイン(かつらはいやだ)


神の薬と言われたロゲインの日本での発売を期待しつつ、国産の効かない育毛剤を試す毎日。
しかし、そんなある日,アメリカのサンディエゴへ出張することになった。
小躍りしてよろこんだ。「これでロゲインが入手できる!」

しかし,それをどうやって買ったらよいかわからなかった。
今なら「ぐぐれ」(=googleで検索しろ)で終わりだが,当時はインターネットなんて便利なものはなかった。
正確にはないわけではないのだが,今のようにWEBが広く使われている時代ではなく,情報を集める場ではなかった。
結局、何一つ情報がないまま、渡米したのだった。

サンディエゴはいい街だった。アメリカ海軍の基地があり,そして基地がある街というのはたいがい治安がいい。夜中に一人で歩いても不安がないほどだ。
本当は,観光でもしたかったが,それどころではなかった。
ロゲインを手に入れなければ...

とりあえず薬局に入った。店主に尋ねるがおいてないという。
何店かまわっても答えは同じだった。
4店目の薬局で、ついにいい返事が返ってきた。
「あるよ」だが、店員は言葉を継いだ。
「ロゲインはあるが,診断書が必要だ。」

診断書!?

医師の処方箋がないと、買えないというのだ。
えー、聞いてないよ。
初めての海外で、処方箋なんてどうやって書いてもらえばいいのか...
困った顔をした私を見て、その店員はなにやらメモを書いてくれた。

「ここへ行って、これを見せろ」

ありがたかった。
さっそく,紹介された診療所へ行って処方箋を書いてもらった。
診断書といっても,簡単な問診だけである。それで2万円近く取られた。
大枚はたいて書いてもらった診断書を持って
薬局に引き返し,ようやく購入できたのである。

よくあんなめんどくさいことをしたなぁと今にして思う。髪への欲求おそるべし。
数年後,ロゲインは診断書なしで誰でも買えるようになった。あの苦労はなんだったんだ。

そこまで苦労して買ったロゲインであるが,決して効いたとは思えなかった。

いよいよ,かつらを考えなくてはもう手遅れになる...
だが、いきなり,かつらなんて...もちろん、周りにばれるじゃないか。
どうしよう...